それぞれが個別に近い状態で臨んだ夏休み前半は、私がメンヒとヴェッターホルンに、若いメンバー二人とIさんがメンヒに登り、一応の成果が出ましたが、独りでツェルマットに向かったKさんは、今回も天候不順でマッターホルンには登れませんでした。大きな山は天候勝負。マッターホルンの場合は、その夏に一回も登れない年もあるのだそうで、それも仕方なかったかと思います。
そういう訳で後半、シャモニーに集合して情報交換した際は少しがっかりしましたが、一番の目標であるモンブラン登山はこれからです。幸い、シャモニーに住んでおられた神田さんというアルプス通の方と行き会うことができ、彼のおかげでモンブラン登山に必須のグーテ小屋の予約もでき、歯車は順調に回り始めました。
(写真:シャモニーで。メンバーと神田さん)
(←モンブラン遠景)
バスでベルヴューに向かい、そこからロープウェイでニ・デーグル(鷲の巣)まで上がります。歩くのはここからです。ガイドックには、この先のクーロワールの落石が酷く、十分注意、とありましたが、八ヶ岳の岩場程度で難しくは感じられませんでした。
小屋に到着して寝る場所を確保、同時に脈拍を計って見ましたが、みな、早い! さすがに標高3835mはきついです。
早めに就寝、翌朝3時には目を覚まし、4時前に出発しました。隊は二つで、私とKさんは二人で組んでモンブランから縦走し、エギーユ・ド・ミディに向かいます。気温が上がると途中の氷河が怖いので、朝早く出発します。女性のOさんと若手のGさん、それにIさんは3人の組で、山頂を往復してその後、列車でシャモニーに戻ります。
まだ暗い中、Kさんと私は出発したのですが、風が酷くて凄く寒い。途中のテートルースの小屋で小休止する予定でしたが、立っていられないくらい寒く、休止は5分ほどで、先を急ぐことにしました。
兎に角、寒い・・・。何しろ、普通なら間欠に吹く風が、全然停まりません。そのうちに右目のメガネの下、目の中で涙が凍ったようで、少しグリグリしてしまいました。高校生のころ、自転車で雪道を通う時に風で鼻水が凍ったことはありますが、こんなことは初めてでした。
寒いことと先が長いので道を急ぐのですが、稜線が細くなる頃、足の弱そうな年配のおじさん(ガイド登山です)が、稜線をゆっくりゆっくり進んでいて、これには少し焦りました・・・。
モンブランの山頂は白い雪に覆われています。陽が上がってからは信じられないくらい暖かくなり、山頂は快適そのもの! ここはヨーロッパ一、高い場所なのですから、その展望の素晴らしさは言葉に表せないくらいのもの。遠くスイスの山々、マッターホルンなどの尖った山容も、美しい青い空の中で銀色に輝いておりました・・・。
(山好きの方には、ここからの景色を是非見て欲しいです)
ですが、ここに長居は禁物、先を急がねばなりません。これからのエギーユ・ド・ミディまでの縦走はかなり長く、標高感も凄い。そこからは、私の登山経験の中でも最も充実して素晴らしい時間になりました。見るべき景色が多く、支峰の4000m峰さえ眼下に見える! あまりに広大で、つくづく、素晴らしいの一言でした。
ですが今回、3つ、ミスをしました。
1)登りで目に氷が出来た時、目を擦ってしまった。10時を過ぎた頃、右目上右半分の
視界が白く曇って、良く見えなくなってしまいました。
2)山頂からの下り、二人で休んでいたときのこと。暑いのでKさんはヘルメットを脱
いで氷の上に置いていた。そうしたらヘルメットが風で流れて滑り始め、あっとい
う間に尾根を下って・・・。たまたま逆ルートを上がってきた若い登山者が、パッ
と飛びついて抑えてくれました。幸運なことはあるものです、彼には心より感謝!
3)ずっと下って平原に下りるころ、気が抜けてすぐ並んで歩いていた。そしたら
ずっと右手にあるルートを行く登山者が、こちらに向けて大声を上げる! 目の前
にクレバスがありました。大きなものではなかったですが、落ちたら怪我していた
かもしれません。これまた感謝でした。
このルートで危険を感じたのは、ただ一か所です。平原を進んでエギーユ・ド・ミディの山稜に入ってからが、思ったよりも急なんですよね・・・。雪が太陽熱でザクザクしてきてしまい、こういうのがアイゼンの底にくっ付いて具合が悪くなります。でも、今回は問題なく進み、ロープ・ウェイ駅には無事に辿り着きましたが・・・。
一緒に行ったのが、Kさんで正解でした。私の眼が傷ついて視界が悪くなったのですが、彼が言うには「角膜に傷が付いたのだと思う、暫くしたら自然治癒して大丈夫だろう!」 既にそうした経験があるらしく、頼もしかった。彼の言のように下界に下りて目は回復、そのおかげで、無事にモアーヌにも出かけられることになりました!
登山をしなくても、エギーユ・ド・ミディからの景色は圧巻です。シャモニーから一気にロープ・ウェイで上がれ便利ですが、高山病は要注意です。
3人組も無事にモンブランに登頂でき、私たちとは違う登山電車の楽しい旅をして、シャモニーに戻りました。
シャモニーは意外と大きな町です。レストランも沢山あって、大統領も来られるという店を紹介していただいて、奮発してフォアグラとエスカルゴを頼んで、皆で分けて食べました。(食後のコーヒーも美味かった・・・)
街には商店がいっぱいありますが、午前は10時から2時間開店、午後は4時から2時間開店、みたいな感じで、昼休みは4時間、皆さんくつろいでおしゃべりに夢中です。グリンデルワルト、ツェルマットよりも大きくて、付近にはゴルフ場もあります。街からモンブランが良く見えます。